令和8年度診療報酬改定から、入院時食事療養費・入院時生活療養費の食費の基準額が1食あたり40円引き上げられました。この記事では、近年運営の赤字が大きな課題となっている病院給食にどう影響するのかを解説します。令和8年度診療報酬改定の概要と食費の見直しの背景にも触れながら、40円増額を活かす厨房改革のポイントをまとめました。病院経営の改善を目指す際にぜひご参考ください。
目次
令和8年度診療報酬改定と食費の見直しの背景

令和8年度診療報酬改定では、日本経済の環境の変化に伴う対応や2040年頃を見据えた医療提供体制の構築、質の高い医療の実現、社会保険制度の安定性や持続可能性の向上といったさまざまな視点から改正が行われています。中でも「物価や賃金、人手不足等の医療機関等を取りまく環境の変化への対応」は重点課題に位置づけられており、人件費・医療材料費・食材料費・光熱水費・委託費等の物件費の高騰を踏まえた具体的な対応策が盛り込まれています。入院時の食費及び光熱水費の基準額引き上げも、こうした物件費高騰への対応策の一つです。
令和8年度診療報酬の内訳と入院時食事療養費・入院時生活療養費
令和8年度診療報酬改定による診療報酬の内訳は以下の通りです。
|
区分 |
改定率 |
|
|
全体 |
+3.09% |
|
|
内訳 |
賃上げ分 |
+1.70% |
|
物価対応分 |
+0.76% |
|
|
食費・光熱水費分 |
+0.09% |
|
|
R6改定以降の経営環境の悪化を踏まえた緊急対応分 |
+0.44% |
|
|
後発医薬品への置換えの進展を踏まえた処方や調剤に係る評価の適正化、実態を踏まえた在宅医療・訪問看護関係の評価の適正化、長期処方・リフィル処方の取組強化等による効率化 |
-0.15% |
|
|
上記以外の分 |
+0.25% |
|
診療報酬全体の+3.09%は、令和8年度(+2.41%)と令和9年度(+3.77%)の2年度平均です。
入院時食事療養費・入院時生活療養費の食費・光熱水費分は、以下の引き上げが行われ、令和8年6月1日より施行されています。
- 入院時の食費基準額の引上げ:1食あたり40円
- 入院時の光熱水費基準額の引上げ:1日あたり60円
これに伴い、患者さまの自己負担額も、原則として1食あたり40円引き上げられます。ただし、低所得者に該当した場合、所得区分等に応じて1食あたり20円~30円に緩和されます。光熱水費は、療養病床に入院する65歳以上の患者さまが対象で、1日あたり原則60円の引き上げですが、指定難病患者等に該当する場合は自己負担はなく据え置きです。

入院時の食費の見直しの流れ
入院時の食費基準額は、食材費等の上昇により、以下の通り過去2回にわたって引き上げが行われてきました。
- 令和6年6月:1食あたり30円の引き上げ
- 令和7年4月:1食あたり20円の引き上げ
しかし、2回の引き上げ後も食材費等の上昇は続いており、これらの見直しではまだ十分ではないという意見も多く寄せられ、今回の40円の引き上げにつながりました。入院時の食費については、これまでの議論の中で次のような意見が示されており、今回の見直しの背景でもあります。
- 患者さまにとって食事は重要な役割を担っている
- 経営が困難な状況では患者さまに質の良い環境を提供できない
- 入院時の患者さまの栄養管理を確保するためにも引き上げが必要
以下は、1食あたりの食費基準額(総額)の引き上げの流れをまとめたものです。
|
令和6年5月まで |
令和6年6月~ |
令和7年4月~ |
令和8年6月~ |
|
640円 |
670円 |
690円 |
730円 |
病院の給食運営が困難になる理由

病院の給食部門は以前から赤字運営が深刻な課題となっています。運営が困難になる理由としては、主に下記のような状況が影響を与えていると考えられます。
- 給食収入の不足(基準額が提供コストに追いつかない)
- 食材費の高騰
- 水道光熱費の高騰
- 給食委託費の高騰
- 人件費の増額
- 調理員の人手不足
人手不足が影響する厨房業務への負担
病院給食の現場では人手不足の課題が深刻化しており、厨房業務への負担増につながっています。調理員は朝食を用意するため早朝から勤務する必要があるなど、もともとシフト負担の大きい業務です。そこに人手不足が重なることで勤務体系がさらに過酷になり、ますます人手を確保しづらい状況が生まれています。また、施設によっては従業員の高齢化が進んでいるケースもあり、人手不足を加速させる要因の一つです。
委託給食で解決できない課題
直営での給食運営が難しい場合、委託給食による課題解決が期待されてきました。しかし、近年では給食委託業者も同様に人手不足や赤字運営の課題を抱えており、委託費の値上げに対応せざるを得ないケースが増えています。値上げに応じることで運営が継続できる場合に限らず、委託業者から撤退の申し出を受けるケースもあるため、状況に応じた柔軟な対応が求められています。
40円増額は病院経営にどう影響する?

公益社団法人日本精神科病院協会による調査では、病院給食費は2025年6月の段階で1人につき1日1,197円の赤字であることが示されています。食材料費や水道光熱費、人件費等の上昇が続く中、1日あたり120円の引き上げ(1食40円×3食分)のみでは、赤字の補てんは難しい状況もうかがえます。
今回の診療報酬改定の中で、食事についての一般的事項として、以下の点が示されています。
- 医療の一環として提供されるべきもの
- 病状に応じて必要な栄養素を確保するもの
- 食事の質の向上と患者サービスの改善を目指して行われるもの
さらに今回から、入院時食事療養費に係る食事療養等の特別食加算の対象に、嚥下調整食が新設されました。患者さまの多様なニーズに対応するため、特別料金の対象となる食事の範囲も拡大しています。
このように、全体的に食事の質の向上がより一層求められていることから、1食あたり40円の増額でまかなえない部分のコスト削減に対応しながら、食事の質向上にも取り組む必要があります。病院経営を改善させるには、多角的な視点からのさらなる工夫が必要となるでしょう。
40円増額を活かす“厨房改革”のポイント

物件費高騰や人手不足の中で病院の給食運営を成り立たせるには、直営か委託かの選択肢にとどまらず、視野を広げて対応策を考えることが役立ちます。ヒントとなるのが厨房改革の視点です。厨房改革で注目される方法には、クックチルやニュークックチルといった新調理方式や、完全調理済み食品の導入などがあります。
クックチル・ニュークックチルの強み
新調理方式として知られるクックチルとニュークックチルには、以下の特徴があります。
- クックチル:加熱調理した食品を急速冷却させチルド保存しておくことで、提供前には再加熱と盛り付けの作業のみで配膳できる。
- ニュークックチル:クックチルの手順でさらに盛り付けまで提供前に行っておくことができ、専用機器の自動再加熱後にそのまま配膳できる。
クックチル方式では、空き時間を使って調理した食品をストックできるため、従来のクックサーブ方式のように食事の度に調理を行う負担が軽減されます。さらにニュークックチル方式では、盛り付けまで事前に行っておくことで、朝食の準備に必要な早朝の勤務の削減などにも役立ち、さらなる業務効率化が図れます。
完全調理済み食品サービスや院外調理システム
ニュークックチル方式によって給食業務を最大限効率化できるものの、導入するには専用機器等の設備費用の負担があります。専用機器はメンテナンスや更新などの維持費用も必要となるため、安定した予算の確保も求められます。こうしたコスト負担が大きい場合に役立つのが、他社の完全調理済み食品や院外調理システムのサービスを導入する方法です。
病院向けの完全調理済み食品を提供しているサービスは複数あり、嚥下調整食に対応しているところも多いです。また、院外調理システムのサービスを導入すると、配送された食品の保管・再加熱・配膳・下膳のみの作業で給食を提供することも可能です。
入院食に役立つナリコマの完全調理済み食品

ナリコマでは、病院さま向けの完全調理済み食品を取り扱っております。入院生活が長い患者さま向けの365日日替わりの献立と、入院期間が短い急性期・回復期病院さま向けの28日日替わりの献立の2種類からお選びいただけます。いずれも、普通食・ソフト食・ミキサー食・ゼリー食の4形態のご用意があり、患者さまの咀嚼力や嚥下力に合わせて選択可能です。さらに、28日日替わり献立では、院内基準の治療食に対応しており、エネルギー差異を1日±5%以内に抑えています。
質の高いお食事とコスト削減を同時に目指すサービスを提供していますので、まずは一度お気軽にご相談ください。
クックチル活用の
「直営支援型」は
ナリコマに相談を!
急な給食委託会社の撤退を受け、さまざまな選択肢に悩む施設が増えています。人材不足や人件費の高騰といった社会課題があるなかで、すべてを委託会社に丸投げするにはリスクがあります。今後、コストを抑えつつ理想の厨房を運営していくために、クックチルを活用した「直営支援型」への切り替えを選択する施設が増加していくことでしょう。
「直営支援型について詳しく知りたい」「給食委託会社の撤退で悩んでいる」「ナリコマのサービスについて知りたい」という方はぜひご相談ください。
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