2026年度診療報酬改定により、入院時食事療養費と入院時生活療養の食費の基準額が1食あたり40円引き上げられました。しかし、近年の長引く食材料費や光熱水費等の高騰、人件費増や人手不足等を考慮すると、厨房の赤字を解消するためにはさらなる工夫が求められます。

従来の厨房運営ではコスト上昇を吸収しきれない場合、病院経営を維持するためには根本的な厨房改革も必要です。この記事では、病院給食のコスト構造を整理しながら、厨房業務の効率化も含めたコスト対策案と「給食の外注」という選択肢を解説します。

入院時食事療養費1食40円引き上げの背景

近年の、人件費・物件費等の高騰や人手不足などの環境の変化への対応、安心・安全・上質な医療の実現、2040年頃を見据えた医療提供体制の構築、社会保障制度の安定性の確保などを踏まえて、2026年度診療報酬改定が行われました。食材料費や光熱水費の高騰は病院給食にも大きく影響しています。

 

こうした背景により、今回の改定で2026年6月1日から、入院時食事療養費と入院時生活療養の食費の基準額が、1食あたり40円引き上げられることとなりました。

 

参考:厚生労働省 令和8年度診療報酬改定について【全体概要版】 2026年

2年間で90円の引き上げでも依然として厳しい現状

2024年5月までの入院時の食費基準額は1食あたり640円でしたが、以下のとおり近年では数回にわたり引き上げられ続けています。

 

改定時期

入院時の食費基準額(1食あたり)

2024年6月~

670円

2025年4月~

690円

2026年6月~

730円

 

食材料費等の高騰に伴い、入院時の食費基準額は見直されてきました。今回の改定を踏まえると、2年間で90円引き上げられています。しかし、こうしたコスト増の負担が大きく、90円の引き上げでも依然として給食運営は厳しい状況です。

 

これらの引き上げは、一般所得者の患者さまの自己負担額にそのまま影響しているため、病院側では患者さまの負担増を懸念する声も挙げられました。その一方で、2026年の引き上げ以前から、病院の経営難に対して引き上げ額が十分ではないという声も多く、今回の改定だけでは経営改善にはつながりにくいとの見解もあります。

 

病院の給食部門の赤字は近年多く見られるようになり、深刻な課題となっています。公益社団法人日本精神科病院協会が実施した調査では、2025年6月時点で病院給食費は1日約1,200円の赤字であることが示されています。1食に換算すると毎食400円の赤字です。今回の改定で40円引き上げられても、1割程度の補てんにしかならないため、引き続きコスト削減の課題は大きいといえるでしょう。

 

参考:厚生労働省 入院時の食費・光熱水費について 2025年

全日本病院協会・日本医療法人協会・日本精神科病院協会 実は病院給食費は1日約1,200円の赤字です! 2025年

病院給食のコスト構造とコスト削減の難しさ

ここでは、病院給食に関わるコスト構造を整理し、どのように負担が生じ、経営難につながっているのかを解説します。

人件費:最低賃金の引き上げや採用コスト増

2025年から2026年にかけて最低賃金の引き上げが行われ、最低賃金の時間額は初めて全国にわたり1,000円超えとなりました。一方で、最低賃金の引き上げに伴い時給額だけでは他との差別化が難しくなり、求人が選ばれにくい側面も見られます。そのため、さらなる求人条件の向上が求められ、採用コストが増加するケースがあります。

 

また、人件費の増加で従業員を確保する予算が足りない、扶養内で働く従業員が年収の調整で労働時間を削減するといった状況により、さらに人手不足が加速する懸念もあります。

 

参考:厚生労働省 地域別最低賃金の全国一覧

食材料費・光熱水費:調理への影響と廃棄コスト

今回の診療報酬改定と入院時の食費見直しの背景にもあるように、食材料費や光熱水費の高騰は給食コストに直接的な影響を及ぼしています。直営で調理を行う場合、食材や献立内容を見直して安価な材料に切り替えるといった対策も可能です。しかし、入院時の食事提供の一般基準である、個々の患者さまが必要とする栄養量を満たし、食事の品質を維持するためには、より一層の工夫が必要です。

 

また、給食提供における課題の一つに廃棄コストがあります。入院時の食事は、患者さまの状態の変化に伴い残食が発生することも珍しくありません。コスト削減により食事の品質が低下し残食が増えれば、廃棄コストの増加につながります。そのため、食品ロス削減も踏まえた取り組みが求められます。

厨房設備費:設備の老朽化や建築費高騰の負担

厨房設備は老朽化するため、メンテナンスや機器の更新が必要となります。効率化を目指して新しい設備へ更新する場合でも、こうした設備維持費は見落とせないコストの一つです。また、厨房の業務効率化やコスト削減対策では、セントラルキッチンなどの設備を建設する方法もあります。しかし、近年では建設工事にかかる費用が高騰していることもあり、投資回収が見込めず断念するケースも見られます。

給食委託費:給食会社の経営難と委託費の値上げ

近年では、給食会社も同様に、人手不足や物価高騰の影響を受けており、経営難に陥っているケースも少なくありません。給食を委託している場合、こうした値上げ要請には応えざるを得ない状況も多く、委託費の引き上げは病院側の給食コストに直接影響します。

厨房業務の効率化&コスト対策案

先述のとおり病院給食のコスト削減の難しさは多岐にわたっており、コスト対策案にも工夫が求められます。例えば、対策では以下のようなポイントがあります。

  • 多くの人が働きやすい業務に調整する
  • 食材料費コストと廃棄コストの削減を同時進行で検討する
  • 厨房の設備環境や調理方式を見直す
  • 委託に限らず直営も含めてコスト削減方法を探る

包括的な視点から役立つのが、厨房業務の効率化です。例えば、調理員のシフト負担の削減に向けて、調理方式を変更する方法もあります。新調理方式の一つであるニュークックチルを導入すると、早朝の勤務の削減が期待できます。

 

また、完全調理済み食品の導入も注目される対策の一つです。完全調理済み食品は、加熱や味付けなどの調理工程が完了しており、再加熱後またはそのまま提供できる食品です。他社の完全調理済み食品を導入することで、施設内の厨房では簡単な作業のみで提供できるため、調理業務量の削減や人件費の削減につながります。

給食を外注する選択肢

自施設で調理員の採用が難しい、厨房設備が老朽化し再建が難しい、コスト削減を厨房改革の視点から見直したい、といった場合に給食の外注は役立つ選択肢の一つです。また、今回の診療報酬改定では、入院時の食事療養に係る特別食加算の算定要件に嚥下調整食が新設され、質の高い嚥下調整食の提供が求められています。このような嚥下調整食への対応が難しい場合も、外注のサービスが役立つことがあります。

 

人手不足対策やコスト削減、食事の品質向上を視野に入れて給食を外注する場合、例えば以下のようなサービス活用方法があります。

  • 他社の製造する完全調理済み食品の導入
  • 他社の完全調理済み食品をニュークックチル方式で活用
  • 現地調理と完全調理済み食品を組み合わせたサービスの活用
  • 院外調理システムサービスの活用

いずれも病院向けのサービスに特化したものを探し、嚥下調整食や治療食への対応も含めて、条件や利用環境との相性が良いものを導入するのがポイントです。

病院給食の効率化を支えるナリコマの完全調理済み食品と運営サポート

ナリコマでは、病院給食向けの完全調理済み食品をご用意しております。ソフト食・ミキサー食・ゼリー食の嚥下調整食や、院内基準の治療食にも対応しています。また、ナリコマのサービスを導入していただいた後も、独自のコンサルティングシートを活用しながら運営状況を分析し、運営改善を継続的にサポートいたします。病院給食の運営で複数の課題にお悩みの際は、ぜひ一度ナリコマまでご相談ください。

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