2026年度診療報酬改定で新たに設けられた「退院後訪問栄養食事指導料」は、患者さまが在宅でも安心・安全に療養できるように支援することを目的とした評価です。この記事では、新設の背景にある2040年問題や円滑な入退院支援にも触れながら、算定要件や実務におけるポイントを詳しく解説します。退院後の食事支援につなげるための、入院時の食事の質向上を考える際にもご参考ください。
目次
2026年度診療報酬改定で新設された「退院後訪問栄養食事指導料」

2026年度診療報酬改定より、退院直後の訪問栄養食事指導に関する評価として「退院後訪問栄養食事指導料」が新設されました。これは、入院中に栄養管理の必要性が高いと診断された患者さまが、在宅でも安心・安全に療養できるように、在宅療養の継続を支援することを目的としたものです。
退院直後に、入院保険医療機関の管理栄養士が対象となる患者さまの住居等を訪問し、患者さまや、患者さまの在宅での療養を支援するご家族等に対して、在宅での栄養管理や食生活に関する指導を行った場合の評価です。退院後訪問栄養食事指導料は、退院した日から1月以内の訪問指導が対象で、1月を超える場合は対象外となります。退院後訪問栄養食事指導料は、退院直後の支援に限定されていることがポイントです。
新設の背景にある2040年問題と円滑な入退院支援

2026年度診療報酬改定には、物価上昇や人手不足への対応、医療の高度化、社会保障制度の安定性などに向けた、さまざまな方針が盛り込まれています。退院後訪問栄養食事指導料の新設にあたっては、2040年問題を見据えた対策として、円滑な入退院支援を推進させることなどが目指されています。
2040年頃を見据えた体制の構築
「2040年頃を見据えた医療機関の機能の分化・連携と地域における医療の確保、地域包括ケアシステムの推進」は、今回の診療報酬改定の主な視点の一つです。約14年後とさらにその先を視野に入れ、患者さまが適切な医療を受けられることや、医療従事者が持続して働ける医療提供体制を構築することを目指します。将来の人口構造や医療ニーズの変化に備えて、地域包括ケアシステムの深化や推進も重要視されています。退院直後の訪問栄養食事指導は、こうした体制の一部として役立つ働きが期待できます。
「治し、支える医療」の実現に向けて
具体的な取り組みでは「治し、支える医療」の実現も主な方針の一つです。主に、以下の内容が目指されています。
- 在宅療養患者や介護保険施設等入所者の後方支援機能(緊急入院等)を担う医療機関の評価
- 円滑な入退院の実現
- リハビリテーション・栄養管理・口腔管理等の高齢者の生活を支えるケアの推進
退院直後の訪問栄養食事指導は、在宅や施設で引き続き療養する患者さまの後方支援や円滑な入退院支援に役立ちます。
退院後訪問栄養食事指導料の算定要件

今回新設された退院後訪問栄養食事指導料は、1回につき530点です。ここでは、対象となる患者さまや算定要件について詳しく解説します。
対象となる患者さま
退院後訪問栄養食事指導料の対象は、保険医療機関を退院した以下の患者さまです。
- 医師の食事箋に基づく特別食を必要とする患者
- がん患者
- 摂食機能・嚥下機能が低下した患者
- 低栄養状態にある患者
上記の特別食については、疾病治療の直接手段として医師の発行する食事箋に基づいて提供される適切な栄養量や内容のもので、以下の規定があります。また、単なる流動食や軟食は含まれません。
- 腎臓食
- 肝臓食
- 糖尿食
- 胃潰瘍食
- 貧血食
- 膵臓食
- 脂質異常症食
- 痛風食
- てんかん食
- フェニールケトン尿症食
- 楓糖尿症食
- ホモシスチン尿症食
- 尿素サイクル異常症食
- メチルマロン酸血症食
- プロピオン酸血症食
- 極長鎖アシル_CoA脱水素酵素欠損症食
- 糖原病食
- ガラクトース血症食
- 治療乳
- 無菌食
- 小児食物アレルギー食
- 特別な場合の検査食
算定要件と併用不可制度について
退院後訪問栄養食事指導料は、保険医療機関を退院した対象の患者さまやご家族等に対して、以下のような要件に沿って行った場合に算定されます。
- 目的:円滑な在宅療養への移行と在宅療養の継続
- 訪問する人:患者さまが入院していた保険医療機関の管理栄養士(常勤でなくても可)
- 指導内容:保険医療機関の医師の指示に基づき、具体的な献立などにより栄養管理についての指導を行う
- 指導時間:概ね20分以上
- 期間:退院した日から起算して1月以内 ※退院日を除く
- 回数:4回まで
医師の指示には、個々の患者さまに適した内容で、熱量や熱量構成・蛋白質・脂質・その他の栄養素の量と、嚥下調整食も含めて病態に応じた食事の形態など、必要な情報について具体的な事柄が含まれている必要があります。また、指導内容では、入院中の栄養管理を踏まえたうえで、患者さまの生活条件や嗜好なども考慮して献立例などを提示します。
退院後訪問栄養食事指導料を算定する場合には、外来栄養食事指導料や在宅患者訪問栄養食事指導料は併算定できないため注意しましょう。

退院後訪問栄養食事指導料Q&A
退院後訪問栄養食事指導料は、退院した日から1月以内に限られており、患者さまの退院先の施設によっては算定できないケースもあります。ここでは、気になりやすいQ&Aをまとめました。
1月を超えても栄養食事指導が必要な場合は?
退院後訪問栄養食事指導料は退院後1月以内に限られているため、1月を超えてなお栄養食事指導が必要なときには、以下の算定を検討してみてください。
- 外来栄養食事指導料
- 在宅患者訪問栄養食事指導料
※管理栄養士による居宅療養管理指導は介護保険のサービスに該当します。
患者さまが管理栄養士のいる施設に入所している場合は?
管理栄養士が配置されている施設に入所中の患者さまや、医療機関に入院中の患者さまについては、算定の対象外となります。
退院後訪問指導料や在宅患者訪問看護・指導料と同じ日に算定できる?
保険医療機関の管理栄養士が、同一の保険医療機関または特別の関係にある訪問看護ステーションの看護師に同行して患者さまの自宅等を訪問し、栄養管理に係る指導等を行った場合でも、各指導料に規定する指導等の時間が重複しない場合は同日に算定可能です。訪問の際は、事前に患者さまの同意を得るようにしましょう。
退院後訪問栄養食事指導の実務ポイント

退院後訪問栄養食事指導の実務にあたっては、多職種連携の体制整備や患者さまとのコミュニケーション構築、退院後の生活で生じる困りごとの把握が大切です。ここでは、訪問時に役立つ実務ポイントをご紹介します。
多職種連携の環境を整える
退院後訪問栄養食事指導は、医師の指示に基づき管理栄養士が訪問して指導するため、病院側での適切な連携が大切です。今回の診療報酬改定では、さまざまな場面で多職種連携が注目され推進されています。多職種連携の強みを退院後訪問栄養食事指導でも活かせると、なお取り組みやすくなるでしょう。
患者さまとの円滑なコミュニケーションを構築
栄養食事指導では、適切な情報を伝えるだけでなく、患者さまが実生活で行動に移せるよう、信頼関係を築きながら進めることが大切です。初回訪問時には指導の目的などもわかりやすく伝え、指導内容を一方的に説明するのではなく、傾聴の姿勢で会話を重ねることで指導を進めやすくなります。指導内容に沿わない行動が見られる場合でも一方的に否定せず、患者さま自身が考えて選択できるように支援することがポイントです。
患者さまの困りごとを把握する
患者さまの退院後の生活は入院時とは環境が異なるため、退院後の食事で負担になっていることなども聞き取れると指導を行いやすくなります。例えば、以下のようなケースも考えられます。
- ミキサーがなくミキサー食を作ることができない
- 嚥下調整食の作り方がわからない
- 食事の調理や準備の負担が大きい
- 食品の選び方がわからない
このように、適切な食事がわかっていても実際に用意することが難しい場合もあるため、何か妨げになっているのかを把握することは大切です。患者さまの困りごとを把握したうえで、個々に最適なアドバイスを行えるように工夫してみてください。
上質な入院食を退院後の食事基盤につなげる

2026年度診療報酬改定では、入院時の食事療養に係る見直しが行われ、特別食加算の対象に嚥下調整食が新設されるなど、より質の高い食事の提供が重視されています。入院中の上質な食事を、退院後の食事の見本として参考にしてもらうことで、退院後訪問栄養食事指導にも役立つでしょう。
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